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4年に1度の数学賞

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。

2014年はおよそ全世界の30代の数学者にとって緊張した年だったでしょう.
何と言っても数学のノーベル賞とも言われるフィールズ賞が4年に1度授与されるその年でしたから.

フィールズ賞は4年に1度開かれる国際数学者会議において40歳以下の若手数学者に送られる賞で,ノーベル賞の部門がない数学では最高級の賞として知られています.
なお,ノーベル賞に数学部門がない理由については色恋沙汰であるとかいろいろ諸説あるようですがどれも憶測に過ぎないようです.

そして今年のフィールズ賞ではフィールズ賞始まって以来初の事態が起こりました.イラン人のマリアム・ミルザハニが女性数学者として初めて受賞したのです.さらにアメリカとフランスの受賞者が圧倒的に多い中,イラン人としても初の受賞です.

ただ,フィールズ賞の授賞に至る業績はほとんど一般人には理解できないのが残念です.例えば青色LEDはすでに広く社会に普及しているため,その偉業を一般市民も感じることができますが,「モジュライ空間におけるトートロジー集合の交差数に関するエドワード・ウィッテンの推測に新たな証明を与え、またコンパクトな双曲面における単純な閉測地線の長さに関する漸近線の公式を導き出した」(Wikipediaより)なんて言われても数学の得意な大学生でも理解するのは難しいでしょう.

その偉業を理解するのが難しくても,数学者がいかに考え,どれだけの情熱を数学に注いでいるのかは,今年邦訳が出版されたセドリック・ヴィラーニ著「定理が生まれる」を読むと垣間見ることができます.
この本ではヴィラーニがランダウ減衰についての論文をクレマン・ムオとともに書き上げ,2010年のフィールズ賞を受賞するまでの日々が日記のようにつづられています.そしてこの本の醍醐味は難解な数式や専門用語も一切省くことなく,数学者の会話,思考がすべて記されているところです.例えばこの本の2ページ目の会話を見てみましょう:

「どうして僕を呼び出したんですか?プロジェクトって?メールではあまり詳しく教えてもらえませんでしたが……」
「大それたことなのは百も承知で,また,あの長年の難題に取り組んでいるんだ.非一様ボルツマン方程式の解の連続性についてだよ」
「条件付きですか?つまり最低限の連続性の評価のもとで,ということですか?」
「いや.条件なしでやる」
「そりゃすごい!摂動法の枠組みではやらないというんですね?条件なしでできそうなんですね?」

さて,この会話がわかる人がどれほどいるでしょうか?よくドラマや映画でも天才博士が助手とこんな小難しそうな会話を繰り広げているシーンがありますが,所詮それらは作り物であり,少し専門知識のある人からするとくだらない内容で萎えてしまったりするものです.しかしこれは紛れもなく最先端の数学者の会話なのです.
とはいえ,数学者も人間であることを感じさせる記述もあります.ある時は音楽を延々聞きながら仕事をしろと自分に言い聞かせ,ある時は紅茶をパクりに学校に行き,そしてまたある時はアメリカに引っ越して好きなチーズがないことをぼやきます.だからこそ,論文が完成するまでの過程に臨場感があり,数式と専門用語がたくさんあるにも関わらずヴィラーニの手記に引き込まれるのです.

さんざんステマをしたところで終わりにしたいと思います.

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未承認 2017年01月09日(月)19時33分 編集・削除

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