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ミドリムシを食べよう?!

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。


最近、ユーグレナ入り豆乳や、ユーグレナ入りコンビニスイーツを見かけるようになりました。
実は、ユーグレナとはミドリムシです。ご存知でしたでしょうか?
 
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図1ミドリムシのイラスト(出典:http://kenko.atsumari.info/wp-content/uploads/2013/11/midorimusi2.jpg)
 
ミドリムシは、そのへんの川や池にいるような微生物です。
なぜ最近食べられるようになったのでしょうか?
 
①そもそもミドリムシとは?
 
ミドリムシは、植物の特徴と動物の特徴をあわせもった珍しい生き物です。
 
ミドリムシは、植物のように光合成をする事ができます。
ミドリムシは、葉緑体という光合成を行う器官を持っていて、
この葉緑体はミドリムシの緑色のもとになっています。
 
ミドリムシのもう一つの特徴は、しっぽ(鞭毛)です。
通常、植物は自ら動く事はできませんが、ミドリムシは
しっぽを使って自由自在に移動する事ができます。
 
 
②ミドリムシのココがすごい!
 
・植物の栄養素と動物の栄養素が一気に摂れる!
私たちは概ね、炭水化物は植物から、アミノ酸は動物から摂取します。
ところが、ミドリムシを食べるとその両方が一度に取れてしまうのです!
 
・粉末1gで1日分の栄養素が摂れる!
ミドリムシは、通常植物がもっている「細胞壁」という器官を持っていません。
細胞壁は、細胞の周りを囲っていて細胞を守る働きをしています。
細胞壁は植物にはとても重要ですが、栄養素は細胞の中に入っているため、
消化・吸収する上では邪魔者となってしまいます。

ミドリムシはこの細胞壁を持たないため、私たちはミドリムシが蓄えた栄養素を
効率よく摂取する事ができます。その栄養吸収率は93%!すごいですね!
 
栄養豊富で吸収率も良いため、ミドリムシ粉末1gで一日分の栄養素が摂取できるそうです。
 
 
③ミドリムシを食べよう!
 
株式会社ユーグレナさんがミドリムシを大量培養する技術を開発したおかげで
(培養技術は秘密だそうです)、サプリメントやコンビニのスイーツなどで
ミドリムシが活躍しています。
 
「ミドリムシを食べる」というと気が引けてしまうかもしれませんが、
ビフィズス菌や納豆菌をたべるのと同じと考えれば、少しは抵抗が少なくなる
・・・かも・・・しれません(微生物と菌は違いますけど)。
 
昆布のような抹茶のような味わいらしいです。栄養豊富なミドリムシ、
話のタネに一度試されてはいかがでしょうか?

お茶の葉っぱ!

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。
 
こんにちは,科学勉強会のつぼたんです。
おつまみにお酒と「食べ物・飲み物」の話題は楽しいですね。さて今回は同じ飲み物でもちょっと方向性の違う、お茶について少し紹介させてください。

実は自分、紅茶マニアで年末になると紅茶の福袋を毎回予約しています。ダージリン、アッサム、等のよく知られたものだけでなく、ニルギリ、キーマンなどなど、いろんな種類があります。


・・・今、予約していないことに気がつきました(汗


さて、そんな紅茶ですが、その葉っぱはどのような植物のものでしょうか。

正解はこんな感じ。

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(wikipedia「チャノキ」より引用)

紅茶の葉は「チャノキ(英名: カメリアキネンシス)」というツバキ科の植物の葉なのです。
「チャノキ」と言うからには、「茶の木」なんだろうと思った方、正解です。

じつは緑茶も紅茶も、ウーロン茶も基本的には同じチャノキの葉から作ることができます。
しかし実際に飲んでみるとその味、苦み、渋み、香りなどお茶の種類によって全然違いますよね。

同じ葉なのに、味わいには大きな差がある。その秘密は「発酵」にあります。

発酵と言えば「かもすぞ~♪」的な菌を思い浮かべますよね。でもお茶の場合の発酵はちょっと違います。お茶の場合の発酵は葉に最初から含まれている酸化酵素による酸化発酵なのです。お茶に含まれるカテキン類が酸化されることでその味が変わります。

ほとんど発酵させないのが緑茶、半分ほど発酵させるとウーロン茶、そして完全に発酵させると紅茶となります。最初は渋みを感じる緑茶も、発酵しきるとその渋みが苦みに変わります。


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(日東紅茶「紅茶の豆知識」より著者改)

冬も深まり、だんだん寒くなってきましたね。そんなときは紅茶を飲みつつ、一年をゆったりと振り返るのも良いかもしれません。

次は抹茶の味がするらしいあの微生物についての話題です。こうご期待。

日本酒の選び方

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。
 
こんにちは,科学勉強会のゾフです。
テーマが「食べ物・飲み物」になってから,昨日,一昨日とおつまみ系のお話が続いたので,今日はお酒,その中でも僕の大好きな日本酒についてお話したいと思います。
 
みなさん,日本酒って飲みますか?
多くの居酒屋で選べる日本酒は1種類だけなことも多いですが,お店によってはいくつか種類が選べるところもあります。
大抵の場合,いくつか種類が選べるお店のほうが美味しい日本酒をおいてあります。
日本酒をたくさんの人に飲んでほしい僕としては,種類が選べるお店で日本酒を楽しんで欲しいのですが,そこでみなさんが悩んでしまうのがどれを選べばいいのか,ということだと思います。
そこで,日本酒を選ぶ際にどこを見たらいいのか,というポイントを2つお話したいと思います。
 
まず,日本酒の種類についてお話します。
日本酒と言っても,原料や製法によって色々な種類に分けられます。大きく分類すると「特定名称酒」とそれ以外の「普通酒」にわけられます。
「特定名称酒」は「大吟醸酒」,「純米大吟醸酒」,「吟醸酒」,「純米吟醸酒」,「本醸造酒」,「純米酒」,「特別本醸造酒」,「特別純米酒」の8つに細かく分類されています。
分類は3つのポイントから分けられますが,その中でもお酒を選ぶ際にわかりやすい吟醸造りについてお話します。
吟醸造りには2つ特徴があります。
1つめは,精米歩合といって,お米をどれだけ削って芯の美味しい部分だけを使うか,を60%以下にしたお米のみを使っていることです。
2つめは仕込み温度を10度以下にしてゆっくりと低温発酵させ、30日以上かけて熟成させるというものです。
下記がその分類分けの結果です。
  吟醸造り:大吟醸酒,純米大吟醸酒,吟醸酒,純米吟醸酒
  それ以外:本醸造酒,純米酒,特別本醸造酒,特別純米酒
吟醸造りのものはお米をたくさん削って小さくなったものをたくさん使っているぶん高いですが,吟醸香と呼ばれるリンゴやバナナなどの香りがし,雑味の少ない繊細な味がします。
それ以外の本醸造酒などは比較的値段が安く,味がしっかりしているのが特徴です。
さっぱりした食べのものには吟醸系,濃い味のものなら本醸造・純米酒系を選んだら良いと思います。
ちなみに,「普通酒」は本醸造酒よりも醸造アルコールが多く加えられているのが特徴で,さらに糖分を加えて造られます。
短時間で発酵するため,コスト・技術の両面でのメリットが蔵元さんにはあります。

次に,日本酒度についてお話します。
居酒屋のメニューなどに日本酒度+3など書かれていることがあると思います。
この日本酒度はよく酒の甘辛の目安に使われるのですが,定義的には日本酒の比重を表しています。
調べ方は日本酒度計を使って4℃の蒸留水と同じ重さの日本酒の日本酒度を0とします。
それよりも軽いものは+の値、重いものは−の値をとります。
日本酒の重さは含まれるブドウ糖濃度によって変わります。
ブドウ糖は水より比重が重いため,日本酒度が高い,つまり+の値が大きいほど辛口になり,逆の場合は甘口になる傾向があります。
そのため,甘辛の指標に使われるのです。
厳密な甘辛度はお酒の中に含まれるブドウ糖濃度と酸度から決定されます。
酸度は乳酸やコハク酸などの含有量から表されますが,度数が高いと酸っぱいのではありません。
酸が多いほど旨味が増し,少ないとさっぱりします。
このことから同じ日本酒度の中でも甘辛が変わってくるのです。
だいたい甘辛の目安としては日本酒度が-3~3が普通,3以上が辛口,-3以下が甘口と思っておけばいいと思います。
 
では,本日のまとめをします。
1.日本酒の分類の仕方に吟醸造りかどうかがあり,香りや味に違いがある。
2.日本酒度は甘辛の目安になり,+のほうが辛く,-のほうが甘い。
以上,日本酒を選ぶ際にとりあえず見てほしいポイントについてお話しました。
みなさんぜひ,日本酒を飲んでみてください!
 
 
参考
石川雅之「もやしもん」(講談社)
Wikipedia「日本酒」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92

明日話したくなる『豆』知識

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。

今年もお酒がおいしい季節がやってきましたね。週末が忘年会という方も多いのではないでしょうか。

そこで今日はお酒のおともに欠かせない『枝豆』の『豆』知識を紹介します!

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【枝豆は未成熟な大豆!】

枝豆は、大豆と収穫時期が異なるだけでじつは植物としては同じものなんです。ただし枝豆、大豆でそれぞれ適した品種が栽培されているので、枝豆用の品種を大豆として収穫するといったことはしません。

ちなみに、平安時代にはすでに今とほぼ同じように食されていたと言われています!昔の人も枝豆が好きだったのですね。

【枝豆は野菜類!?】

枝豆が野菜だと言われるとピンと来ないかもしれませんね。

枝豆はマメ科の植物なのですが、じつは農林水産省の区分では野菜類に分類されています(大豆は豆類に分類されます)。もとは同じ植物なのに不思議ですね。

未成熟な豆にはビタミンなどの野菜に含まれる栄養が豊富なため、野菜類に分類されているのだそうです。さやいんげん、グリーンピース、そらまめなども野菜類の仲間です。

参考:農林水産省 作況調査
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/index.html

【枝豆はお酒と相性抜群!】

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「お酒と枝豆」この組み合わせはじつは理にかなったものなのだそうです。

枝豆にはビタミンやカルシウム、食物繊維などの栄養が豊富なので、お酒の席では偏りがちな栄養を補ってくれるありがたい存在なのです。野菜類に分類されるのも納得してしまいますね。

また、ビタミンB1やメチオニンがアルコールの分解を促す働きを持っており、肝臓の負担を減らす手助けもしてくれるのです。まさに名コンビ!
(ただし塩分の取りすぎには気をつけましょう)

【edamameは世界共通語!?】

私たち日本人も大好きな枝豆ですが、現在では海外でも愛されています。なんと「edamame」は海外の辞書にも掲載されているのです!

和食が無形文化遺産に登録されたことで世界中で和食ブームが起こっていることは有名ですが、海外では「edamame」も和食のひとつとして認識されているようで、高い関心を集めています。

以下のように、おいしい枝豆のゆで方を外国人の方にもわかりやすく紹介した動画も作られています。

皆さんも忘年会で枝豆を見かけたら『豆』知識を披露してみてはいかがでしょうか。

本日の記事はM.Aがお送りしました。みなさま素敵な枝豆ライフを!

見た目の色だけでは決まらない?「赤身」のお魚,「白身」のお魚の区別の仕方

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。
 
こんにちは,科学勉強会のラーです。
昨日までの5日間は「天気・季節」がテーマでしたが、本日12月11日から5日間のテーマは「食べ物・飲み物」に変わります。
本日は予告にもあったとおり,お魚の赤身と白身についてお話したいと思います。
 
12月といえば,忘年会シーズンですね。
これから,飲み会で居酒屋に行く機会も増えてくると思います。
居酒屋の料理で,よく鍋やお刺身として出てくるのがお魚です。
皆さんはどのお魚が好きですか?
僕はサケが大好きです。
あのきれいなオレンジ色の身は食欲をそそられます。
 
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(wikipedia「サケ」より引用)
 
この一見赤っぽく見えるサケ,実は白身の魚だって知っていましたか?
「赤身」のお魚,「白身」のお魚,この2つの区別するのは,単純な見た目の色だけではないのです。
 
一般に,赤身の魚は「100gあたりの身に含まれるヘモグロビンかミオグロビンの含有量が10mg以上の魚肉」と定義されています。
この定義に当てはまるのはマグロ,カツオ,アジ,サンマなど,回遊魚の仲間です。
回遊魚はずっと泳ぎ続けるため,身,つまり筋肉に持久力のある遅筋を多く含んでいます。
この遅筋は大量の酸素を運ぶために,赤い色のヘモグロビンかミオグロビンの含有量が多いのです。
サンマなど,一見,身が白い魚も,血合いを多く持っているものは赤身の魚に入ります。
 
逆に,白身の魚は赤身の魚に含まれない,ヘモグロビンかミオグロビンの含有量が10mgより少ない身を持つものを言います。
これに当てはまるのはタイ,ブリ,サケ,ヒラメなどです。
これらの魚はあまり回遊せず,岩礁や海底・砂地等で一匹でふらふらしたり,身を潜めじっとしていたりします。
あまり動かないので大量の血液は必要なく,身が白いのです。
サケもヘモグロビンとミオグロビンの含有量が少ないので,白身の魚に入ります。
では,サケはどうして赤っぽい身をしているのでしょうか?
これにはアスタキサンチンという赤い色素が関係しています。
サケは海を泳いでいる時,アスタキサンチンを含んだオキアミなどのプランクトンを食べています。
このアスタキサンチンを筋肉に取り込んでいるため,サケの身は赤っぽく見えるのです。
 
この赤身と白身,区別の仕方である筋肉の違いから食べる際の特徴が異なります。
赤身は味が濃く,熱を加えると硬くなりやすいです。
逆に,白身は味は淡白で,熱を加えても柔らかくほぐれやすいです。
蒸し料理や鍋料理に白身のお魚が多く使われるのも納得ですね。
 
「赤身」のお魚,「白身」のお魚,この2つの区別が見た目の色だけでは決まらない事はわかっていただけたでしょうか?
ぜひ,飲み会の話のネタにでもしてください。
明日は,M.Aさんによる枝豆のお話です。
飲み会で使えそうですね!
お楽しみに!
 
 
参考:
赤身魚(,白身魚)と青魚の比較
http://difference.shining-eternally.com/c19.htm
wikipedia「赤肉」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E8%82%89

雪を作る話 ~北海道大学で中谷宇吉郎を巡る~

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。


昨日に引き続き、今日もテーマは「雪」。
北海道大学で雪の研究といえば、中谷宇吉郎先生です。
今日は北大にある中谷先生ゆかりの建物を巡りつつ、中谷先生の行った雪に関する研究をごく簡単に紹介します。
(以下、敬称は省略させていただきます)


まずやってきたのが、北海道大学 低温科学研究所。
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中谷宇吉郎は、世界で初めて人工的に雪の結晶を作ることに成功しました。低温科学研究所は、そのことがきっかけで設立された研究所です。

その実験棟には、中谷宇吉郎の人工雪の発生装置のレプリカが展示されています。
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中谷宇吉郎はこの装置を使って、自然に観察できるほとんどの種類の雪の結晶を、人工的に作り出すことに成功しました。

その際、結晶の核としてウサギの毛を使用したことは有名な話でしょう。
ウサギの毛には所々に細かいこぶがあり、それが人工雪の結晶の核になるのにちょうどいいのだそうです。


ところで、「世界初の人工雪の結晶」が作られた時に使われていたのは、実はウサギの毛ではなく羅紗(ウール)の糸だったというのはご存知でしたか?

当時、人工雪結晶製作の実験には、佐藤磯之助と関戸弥太郎という2人の学生が取り組んでいました。
2人は同じ低温研究室で背中合わせになって、それぞれ人工雪の結晶作りに挑んでいました。

結晶の核としては、はじめの実験では木綿糸が使われましたが、糸のほぼ全面に結晶がついて団子状になってしまい、独立した結晶を作ることはできませんでした。
ここで佐藤が羅紗の糸を使って実験を行ったところ、糸の先端に扇形六花の結晶が成長しました。
これが世界初の人工雪結晶です。1936年3月12日のことでした。

しかし。

 佐藤は控え目な性格の人であったらしく、三月十二日にできた人工雪結晶も、多くの失敗作の中の偶然の産物とみて、すぐに宇吉郎に報告しなかった。
   ——東 晃「 雪と氷の科学者 中谷宇吉郎」p.24

2日後の3月14日、今度は関戸弥太郎が、防寒服の襟についているウサギの毛を使って実験を行い、こちらも毛の先端に六花の結晶を成長させました。

 関戸は低温室から理学部に走って宇吉郎を呼びにゆき、二人で”初めての”人工雪を見て喜んだ。
   ——東 晃「 雪と氷の科学者 中谷宇吉郎」p.24

つまり、中谷宇吉郎が初めて見た人工雪の結晶は関戸の作ったものであり、佐藤の作った結晶が世界初の結晶であると認められたのは、しばらく後のことでした。


これらの実験が行われた「常時低温研究室」は、低温科学研究所創立後はその分室となりましたが、1978年8月には取り壊されました。
その跡地に作られたのが、この記念碑です。
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場所は北大構内の、北11条のエンレイソウ(レストラン)の前になります。
雪の結晶を象った六角形の石に、関戸弥太郎によって書かれた「人工雪誕生の地」という文字が刻まれています。


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こちらは北海道大学の理学部本館です。現在はその半分ほどが総合博物館となっています。
中谷宇吉郎の教授室もこの建物にあり、初めに雪の結晶の観察が行われたのはこの建物の廊下の片隅だったそうです。

この総合博物館の1Fにも、中谷宇吉郎に関する常設展示があります。
人工雪発生装置や実際に撮られた雪の結晶の写真の他、中谷宇吉郎の研究人生を紹介したドキュメンタリーなどの映像資料も見られますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。


…と、このように「雪や氷の研究者」として紹介されがちな中谷宇吉郎ですが、彼の魅力はそれだけではありません。
例えば、中谷宇吉郎は科学をわかりやすく伝えるための手段として、多数の随筆や書籍を書いています。彼の書く文章はシンプルですが、科学的考察に満ちあふれ、読む者に「科学とは何か」ということを教え、また考えさせるきっかけを与えてくれます。

ここでは中谷宇吉郎の著作の中から、私が特に感銘を受けた部分を紹介して終わりにしたいと思います。
興味がわいた方はぜひ読んでみてください。

 しかしそれだけならば、虹はスペクトルの七色をもっているはずなのに、実際は赤と黄色とだけがひどく目立つ虹がしばしば現れる。それをよく見ないことがいけないのである。実際の虹をよく見ないで、虹は七色と思いこんでしまうのは科学の心に反していることなのである。 (中略)
 「虹は水滴の反射屈折によるスペクトル作用さ」と言って、それ以上実際の虹を見ない人がある。そういう人には虹の美しさは分らない。学問によって眼をあけてもらうかわりに、学問によって眼をつぶされた人である。
   ——中谷 宇吉郎 「虹」 (中谷宇吉郎集 第5巻 p.43)

 自然科学は、自然の本態と、その中にある法則とを探究する学問である。
 しかしその本態とか、法則とかいうものは、あくまでも科学の眼を通じてみた本態であり、また法則である。それで科学の真理は、自然と人間との協同作品である。 (中略)
 科学の真理が、自然と人間との協同作品であるならば、科学は永久に進化し、変貌していくものである。
   ——中谷 宇吉郎 「科学の方法」p.197

文章:二世


参考:
*東 晃「 雪と氷の科学者 中谷宇吉郎」北海道大学図書刊行会(1997)
*中谷 宇吉郎「中谷宇吉郎集 第五巻」岩波書店(2001)
*中谷 宇吉郎「科学の方法」岩波新書(1958)
*中谷 宇吉郎「雪」岩波書店(1994)
*太田 文平「中谷宇吉郎の生涯」学生社(1977)
*HU-OCW ウェブサイト
http://ocw.hokudai.ac.jp/Topics/IAI/Interview/Wakatsuchi/

雪は天からの手紙 〜雪の結晶の成り立ち〜

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。

今年のアドベントカレンダーでは、12/5からの5日間に「天気・季節」というテーマを設定していますが、この時期の札幌で「天気・季節」と言ったらやっぱり「雪」ですよね。
というわけで今日も昨日に続き、雪の話題をお送りします。

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そもそも、雪はどうやってできるのか知っていますか?
「雨が凍ったもの」だと思っている人はいませんか?

雨は上空にのぼった水蒸気(気体)が水滴(液体)になって降ってくるものです。
気体が液体になることを「凝集」といいます。
これに対し、気体が(液体の状態を経ることなく)固体になることを「昇華」といいます。
雪とは、水蒸気(気体)が昇華して氷(固体)になったもののことをいいます。

雨(または上空で溶けた雪)が上空で凍って降ってくるものは凍雨<とうう>といい、厳密には雪とは別のものとされます。


今日はさらに詳しく、雪の結晶の成り立ちを追ってみましょう。

雪ができるときに必要となるのが、その「核」となるものです。
上空では、空気中の塵の微粒子やイオンなどが核になります。

まず、核に水蒸気が凝着して(くっついて)「氷晶」になります。
氷晶は、いわば雪の赤ちゃんで、水晶のように頭の尖った六角柱の、極めて小さな結晶です。

この氷晶が地上へと落ちてくる間に、周囲の水蒸気が昇華作用で氷となって氷晶にくっついて、雪の結晶として成長していきます。

ちなみに霰<あられ>や雹<ひょう>は、氷晶に凝集した水の粒がついて凍り、塊になったものです。直径5mm未満のものを霰<あられ>、5mm以上のものを雹<ひょう>と呼びます。

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雪は上空で氷晶となり、中心から外側へと徐々に成長しながら地上に降ってきます。
その結晶の成長の仕方は、結晶が成長する瞬間の周囲の状態(気温と水蒸気の過飽和度)によって決まります。

つまり地上では、降ってきた雪の結晶の形を見ることで、その雪が通ってきた空の状態を知ることができるのです。
このことを、雪の結晶の研究で有名な中谷宇吉郎は「雪は天からの手紙である」という言葉で表現しています。

というわけで明日は、そんな中谷宇吉郎先生について熱く語ります!お楽しみに!


文章:二世(科学勉強会/NSI)

【参考】
*中谷 宇吉郎「雪」岩波書店(1994)
*気象庁 よくある質問集(雨・雪について)
 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq1.html

【関連記事(つづき)】
雪を作る話 ~北海道大学で中谷宇吉郎を巡る~
http://tehiro.sakura.ne.jp/studyaid/diary.cgi?no=58

踊る冬の電線

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。

12月も初週が過ぎ,いよいよ冬となりました.この記事を読んでおられる方がどこに住んでおられるかはわかりませんが,私が住んでいるところでは雪が降り積もっております.外に出ると道は白い雪で覆われており,足跡を残しながら歩くことになります.そして上を見上げると屋根だけでなく,電線にも雪が付着しているのが見られます.今日はこの電線についた雪が時に厄介な現象を起こすということについて書きましょう.

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着氷雪による電線への影響としてまず挙げられるのは重量の増加です.電線に雪や氷がつくと当然ですがその分重くなります.電線を支えているのは電柱,あるいは鉄塔ですから設計荷重を超える重さになってしまうとこれらの支持物が倒壊する危険があります.現に前の冬で着雪による電柱の倒壊事例があることが経済産業省の資料として報告されています.

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着雪で倒壊した電柱(Wikipediaより)

しかし「電線が雪で重くなる」というのでは明日話したくなるような豆知識ではないですよね.もちろん着氷雪による影響は加重だけではありません.時に雪国の電柱は「飛び跳ね」,「踊る」のです.

次の図のように,鉄塔の間に縦に並んで張られた3本の電線に雪がごっそりついている状況を考えましょう.雪は相当の重さになって電線は普段よりも下に引っ張られた状態になっています.

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ここで突然一番下の電線についていた雪が何かの拍子に一気に落ちたとしましょう.さて,どうなるでしょうか?実は雪が落ちた反動で,ゴムのごとく電線が飛び跳ねます.この現象はスリートジャンプといい,飛び跳ねの大きさは数mにも及びます.大きい鉄塔間を結ぶような電線は実は裸電線,つまり何も覆われていない銅の線であることが多いため,スリートジャンプの拍子に電線同士が接触してしまうといわゆるショートになってしまい,停電を引き起こす可能性があるのです.

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もっと奇妙な現象もあります.吹雪の日には一方向から雪が吹き付けられ,だんだん次のような形になっていきます.

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この形,飛行機の翼の断面に似てません?実は強風と相まって電線に揚力が生まれ,電線が激しく振動するのです.この現象をギャロッピングと言います."galopping power line"あたりで動画を検索すると翼を授けられた電線の様子を見ることができます.

いかがでしょうか?電線に雪がついているのを見るとわくわくしてくるようになってきませんか?

紅葉はなぜ色づく?

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。


皆さんこんにちは科学勉強会simatter です。

アドベントカレンダー、今日のテーマは季節、天気と言うことで
「紅葉」についてお話ししたいと思います。(北海道は雪が降ってしまいましたね−)

日本人の心を楽しませ、四季の移ろいを感じさせる紅葉。鮮やかな黄色、赤色。
どうしてあんな綺麗な色ができるかご存知でしょうか?

葉の中にはもともと、カロチノイド(黄色)、クロロフィル(緑)という色素が含まれています。クロロフィルは光合成を行なうための葉緑体に含まれている色素です。カロチノイドとクロロフィルでは後者の量が圧倒的に多く、このために葉は緑色に見えます。葉緑体は光合成を行い二酸化炭素と光から酸素と糖を作り出す重要な働きをします。

ところが秋になり日照時間の減少、気温の低下が進むと光合成の効率が悪くなるため
木は葉と枝の間に離層と呼ばれるコルク状の膜をつくり落葉の準備をします。
落葉は光合成により生成される養分が葉自体が消費する養分よりも少なくなり、生きていくために不利になるのを防ぐためと考えられているそうです。自然ってすごいですね。
すると根や幹からの水分・養分の供給が滞り、クロロフィルは新しく作られずに分解されていきます。カロチノイドはクロロフィルよりも分解されにくく、葉の中ではカロチノイドの割合が大きくなるため、結果として葉は黄色に色づきます。

では、赤色はどうでしょうか?
こちらは葉の中に残った糖の働きによって赤色の色素であるアントシアニンが生成されるためと言われています。離層が形成された後では光合成で出来た糖が葉の中に貯められた状態になります。そこに紫外線が照射されると糖が分解され、アントシアニンが生成されます。
ちなみに鮮やかな赤色になるためには以下のことが重要と言われています。
・光合成により糖がつくられること
・昼に作られた糖が消費されないために昼夜の寒暖の差が大きいこと
・葉が色づく前に枯れないため適度な湿度があること

また、なぜ木が葉を赤色にするかという理由ははっきりとはわかっていないそうです。
鳥がより実を多く運んでくれるよう、葉の温度を上げるため、抗酸化性を増し過酷な冬の環境に耐えるため等々…諸説あるそうです。


今日は紅葉はなぜ色づくかについてお話ししました!
おさらいです
・紅葉は葉の中の色素の割合が変化することで起こる
・夏まで:クロロフィル(緑色)が葉の中で支配的→秋:気温が下がりクロロフィルが分解→カロチノイド(黄色)が現れてくる→糖からアントシアニン生成、赤く色づく
・鮮やかな色のためには昼夜の気温差、日照時間、湿度などが色づきに影響する


それでは


参考文献
„Why autumn leaves turn red“ Nature news 2007.10.29 http://www.nature.com/news/2007/071029/full/news.2007.202.html
国立科学博物館ホットニュース 「紅葉・黄葉のしくみ」2007.12.15
http://www.kahaku.go.jp/userguide/hotnews/theme.php?id=0001217205482884&p=2

緑色の夕焼け

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識2」( http://www.adventar.org/calendars/513 )の一環として書いています。

こんにちは、科学勉強会の清水です。
昨日までの5日間は「2014年にあったこと」がテーマでしたが、今日からは「天気・季節」がテーマに変わります。
ということで、今回のテーマは「緑色の夕暮れ」です。

さて、夕暮れと言えば様々な分野で題材にされている、とても美しい自然現象ですね。
みなさんは夕焼けを思い描くとき、どんな色を想像するでしょうか? 真っ赤な夕焼けや、薄黄色の夕焼けなど千差万別だと思います。
ですが「緑色」の夕焼けを思い描いた人はいないでしょう。
「そんな色の夕焼けはあり得ない!」とお考えですか? 実は緑色の夕焼けは実在するのです!

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この緑色の夕焼けはグリーンフラッシュ(緑閃光)と呼ばれる非常にまれな現象です。
周囲は普段通りの夕焼けの色をしていますが、太陽のみが緑色に光って見えますね。
様々な気象条件を偶然満たしたとき、一瞬だけ見ることができる光景で、ハワイでは見た人が幸運になると信じられているそうです。


では、ここからは夕焼けの色が生まれる仕組みについてお話しましょう。
昼間に見える太陽光は白いのに、日の出と日の入りの太陽光が赤く色づいて見えるのは、レイリー散乱という現象が関わっています。
この現象は「光が微粒子によって散乱する」というもので、もっとも身近な例こそが大気による太陽光の散乱なのです。

太陽光には様々な色が含まれています。
プリズムを使うと図1のように青から赤まで光を分解することが可能です。
そう、夕焼けの色である赤色や黄色、そして緑色も最初から太陽光に含まれているのです。

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昼間は太陽光が大気を通る距離が短く、散乱はそれほど起こりません。
しかし、夕暮れ時など太陽光が大気を通過する距離が長くなるにつれて、散乱される量が増えてしまいます。
ここで重要なのは「青に近い光ほど波長が短く、散乱されやすい」ということです。
青や緑の光は大気を通過する途中で散乱され、残った黄色や赤色の光のみが私たちの目に届きます。
これこそが、普段私達が目にする夕焼けの色なのです。

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では、光を散乱してしまう微粒子が少ない日であれば、緑色の光も私たちの元へ届くのでしょうか?
実は届いているのです。しかし残念なことに、赤色や黄色の光が強すぎて私たちの目では感じることができません。
そこでもう一つの条件である「光の屈折」が必要となるのです。

真空の宇宙空間を進んでいた太陽光が地球の大気に突入すると、進行方向が微妙に変化します。
このとき、赤色に近い光ほど進行方向の変化が大きいという性質から、赤色や黄色の光は大きく地球側に曲げられてしまいます。
すると太陽が沈みこんだ瞬間に、図3のように緑色の光以外が私たちの目に届かない一瞬が生まれるのです。
この一瞬の閃光が「グリーンフラッシュ」なのです。

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見るためには様々な条件が奇跡的に重なっている必要がありますが、是非自分の目で見てみたい光景ですね。
以上、夕焼けの変化に冬の到来を感じながら、清水がお送りしました!


参考URL
ナショナルジオグラフィックニュース「なぜ赤い? 夕焼けの科学」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20131029002